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映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』ネタバレ考察&解説!沙代は誰の子供?左目が持つ意味は何?

鬼太郎誕生_ゲゲゲの謎_考察_サムネイル

2023年11月17日に公開され、興行収入約27億円を記録、「第47回 日本アカデミー賞 優秀アニメーション作品賞」を受賞した映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』。

水木しげる生誕100年記念作品として制作された本作は、これまでほとんど描かれることのなかった鬼太郎の父(目玉のおやじ)の過去と鬼太郎誕生秘話を描いた作品である。

また2024年10月4日には、327カットをリテイクした『真生版』の公開を予定している。

そんな映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』(通称:ゲ謎)には、たくさんの伏線が散りばめられているほか、考察しがいのある意味深な描写が多く、「あのシーンにはどんな意味があるの?」と鑑賞後に疑問を抱いた方も多いのではないだろうか?

そこで本記事では、

  • 沙代はいったい誰の子供なのか?
  • 左目にはどんな意味があるのか?
  • 日本人形はどんな伏線になっている?

などといった本作の謎を5つピックアップして考察していくとともに、作品概要や登場キャラクターを紹介していく。

映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』の作品概要&あらすじ

昭和31年。鬼太郎の父であるかつての目玉おやじは、行方不明の妻を捜して哭倉村へやって来る。その村は、日本の政財界を裏で牛耳る龍賀一族が支配していた。血液銀行に勤める水木は、一族の当主の死の弔いを建前に密命を背負って村を訪れ、鬼太郎の父と出会う。当主の後継をめぐって醜い争いが繰り広げられる中、村の神社で一族の者が惨殺される事件が発生。それは恐ろしい怪奇の連鎖の始まりだった。

引用元:映画.com『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』
『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』作品概要
公開2023年11月17日
上映時間104分
監督古賀豪
脚本吉野弘幸
原作水木しげる
制作東映アニメーション
キャスト鬼太郎の父/関俊彦 水木/木内秀信
龍賀沙代/種崎敦美 長田時弥/小林由美子
龍賀時貞/白鳥哲 龍賀時麿/飛田展男
龍賀孝三/中井和哉 龍賀乙米/沢海陽子
龍賀克典/山路和弘 龍賀丙江/皆口裕子
長田(龍賀)庚子/釘宮理恵 長田幻治/石田彰
ある謎の少年/古川登志夫
鬼太郎/沢城みゆき ねこ娘/庄司宇芽香
山田/松風雅也 目玉おやじ/野沢雅子

映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』は、水木しげる生誕100年記念作品として2023年11月17日に公開された。

テレビシリーズ『ゲゲゲの鬼太郎(第6期)』をベースとした本作は、後の目玉おやじとなる鬼太郎の父(ゲゲ郎)と、帝国血液銀行に勤める野心家の水木が出会い、辺境の地・哭倉村と政財界を牛耳る龍賀一族の闇に迫っていく活躍を描いたミステリーファンタジー作品だ。

物語は鬼太郎の父(ゲゲ郎)と水木の2人を主人公とし、タイトル通り鬼太郎が誕生に至る前までの出来事が描かれている。

人間の持つ残酷な側面を隠すことなく描いた本作は、「PG12」指定で公開された。また2024年10月4日には、327カットをリテイクした『真生版』の公開を予定しており、こちらのレーティングは「R15+」指定に引き上げられている。

映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』の主要登場キャラクター

鬼太郎誕生_ゲゲゲの謎_相関図
引用元:映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』

映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』の主要登場キャラクターを、昭和31年と現代に分けて紹介していく。

昭和31年の登場キャラクター

物語のメインとなる昭和31年の主要な登場キャラクター。

鬼太郎の父(後の目玉おやじ)

鬼太郎の父(後の目玉おやじ)
引用元:映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』

本作の主人公。幽霊族の生き残りで、かつては妻と幸せに暮らしていた。しかしその妻と生き別れてしまい、行方を追って龍賀一族が仕切る哭倉村にたどり着く。

作中で本名は明かされておらず、その姿を目にしたある謎の少年(ねずみ)が「ゲゲ」と驚く反応をしたことから、相棒となる水木には「ゲゲ郎」と呼ばれている。

元々は幽霊族を迫害した人間を憎んでいたが、後に妻と出会ったことで心境に変化が起きた。

先祖代々伝わる家宝として「霊毛組紐」を左手首に巻いている。

水木

水木
引用元:映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』

本作のもう1人の主人公。東京にある帝国血液銀行に勤めるサラリーマン。戦争で玉砕命令を受けながらも生き残ったという壮絶な過去を持ち、その経験から野心に燃えている。

性格は一見するとクールでシニカルに映るが、実際には情に厚く、時に感情的な一面も見せる優しさを持った人物。作中では「佐田啓二みたい」と評されており、整った外見をしている。

ふとした出来事をきっかけに戦争の記憶がフラッシュバックする、悪夢にうなされるなど、PTSDを発症している可能性が高い。また、左目と左耳の上部には戦争で負った傷跡が残っている。

龍賀製薬の担当者として、当主・龍賀時貞の死後、密命を帯びて哭倉村を訪れる。

龍賀沙代

龍賀沙代
引用元:映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』

龍賀家長女・乙米と克典の一人娘。これまで哭倉村から一度も外に出たことがなく、東京からやってきた水木に興味を抱く。

美しく可憐な容姿をしており、一見おしとやかな令嬢だが、芯が強く、時に大胆な言動をとることもある。

長田時弥

長田時弥
引用元:映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』

龍賀家三女・庚子と長田幻治の一人息子。沙代とは従兄妹関係。病弱で咳き込むことがある。

人懐こい性格をしており、水木やゲゲ郎ともすぐに仲良くなった。時貞の遺言により、時麿の次の当主に指名された。

龍賀時貞

龍賀時貞
引用元:映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』

日本の政財界を裏で牛耳り、哭倉村を仕切っている龍賀一族の当主。戦後大きく業績を伸ばした龍賀製薬の会長かつ立役者である。

物語序盤に死去しており、その話を聞きつけた水木が自身の野心と勤め先である血液銀行からの密命を携えて哭倉村を訪れる。

龍賀時麿

龍賀時麿
引用元:映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』

龍賀家長男。公家の衣装・直衣を身に纏い、白塗り化粧を施している。

健康面に問題があり、何年も人前に姿を見せていなかった。そのため水木は跡継ぎにはならないと踏んでいたが、時貞の遺言により龍賀家当主となる。

龍賀乙米

龍賀乙米
引用元:映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』

龍賀家長女。克典の妻で、沙代の母親。

龍賀の家柄に誇りを持ち、厳格な雰囲気で気の強い性格の中年女性。入り婿である夫・克典を見下しており、夫婦仲は険悪。時貞の遺言により、龍賀製薬の実験を握ることとなる。

龍賀克典

龍賀克典
引用元:映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』

龍賀製薬の社長。乙米の入り婿で、沙代の父親。

時貞からの信頼も厚く、次期当主は克典になると噂されていた。野心的な水木のことを気に入っている。龍賀家での立場は弱く、哭倉村の閉鎖的な在り様には嫌悪感を抱いている。

長田庚子

龍賀庚子
引用元:映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』

龍賀家三女。哭倉村の村長・長田幻治の妻で、時弥の母親。

気弱な性格で、姉である乙米に対してもおどおどした態度をとっている。幻治との関係は仮面夫婦そのもので、作中では一切会話をしていない。

長田幻治

長田幻治
引用元:映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』

哭倉村の村長。庚子の夫で、時弥の父親。

糸目が印象的な青年で、屈強な男たちを従えて村の自警を行っている。

龍賀孝三

龍賀孝三
引用元:映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』

龍賀家次男。哭倉村にある禁域に立ち入った後、何らかの理由で心を壊した。現在は蔵に籠もってひたすら絵を描き続けている。

ある謎の少年(ねずみ)

ある謎の少年(ねずみ)
引用元:映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』

龍賀家の下男として働く少年。水木の案内役のような立ち回りをする。

髭を生やしており、シリーズお馴染みのあの男に似ている。作中でゲゲ郎からは「ねずみの」と呼ばれている。

鬼太郎の母(岩子)

鬼太郎の母(岩子)
引用元:映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』

ゲゲ郎の生き別れた妻であり、鬼太郎の母。作中で本名は明かされていないが、ファンからは便宜上「岩子」と呼ばれている。

写真を見た水木が「美人だ……」とつぶやいたことからも、整った容姿をしていたと思われる。人間も妖怪も分け隔てなく接する慈愛に満ちた女性で、人間を憎んでいたゲゲ郎も、岩子の影響を受け人間への考え方を改めた。

行方不明となってしまい、ゲゲ郎は彼女を探しに哭倉村へと辿り着いた。

現代の登場キャラクター

本作の冒頭とラストにて登場する現代の登場キャラクター。

鬼太郎

鬼太郎
引用元:映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』

幽霊族の末裔で、人間と妖怪の間で戦う少年の姿をした妖怪。

目玉おやじ

目玉おやじ
引用元:映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』

肉体を失い、目玉だけの姿となって生き延びた鬼太郎の父(ゲゲ郎)。ある想いを胸に、鬼太郎とともに廃村となった哭倉村を訪れる。

ねこ娘

ねこ娘
引用元:映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』

鬼太郎の仲間で、人間と妖怪の間に生まれた半妖怪。鬼太郎たちに同行し哭倉村を訪れる。

山田

山田
引用元:映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』

廃刊間近の雑誌会社に勤める記者。眼鏡で出っ歯。

スクープを得るために『都市伝説となった妖怪少年・鬼太郎の出生の秘密』をテーマに記事を書こうと、鬼太郎たちの後を追う。

【ネタバレ】『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』の5つの謎を徹底考察!

ここからは、映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』を鑑賞した方が気になるであろう点や意味深なシーン、伏線などについて、ネタバレを含みつつ徹底考察していく。

頂天眼は龍賀時貞の隠喩だった?

序盤の帝国血液銀行の社長室のシーンに、不気味な金魚のアップがカットインされた。気色悪いそのカットに、何かしらの意図があるのではと考えた人も多いことだろう。

この金魚は実在する頂天眼(チョウテンガン)という品種の金魚である。アカデメキンの突然変異を固定化した品種で、眼が天を向いていることから名付けられたとされている。

一説によると、デメキンを先端がすぼんだ瓶の中で何世代にもわたり飼育したところ、横についていた眼が光を求めて上を向くようになったという。

終盤にゲゲ郎と水木が時貞に対峙した窖(あなぐら)は、外界からの光がほとんど届かない閉鎖的な空間だ。それはまるで先端がすぼんだ瓶のようである。

自らの栄華という「光」にしか目が向かず、その光に執着するあまり、下にいる民衆の存在や彼らが抱える苦しみを全く顧みなかった時貞こそ、本作における頂天眼だったのではないだろうか。

また、頂天眼は哭倉村の地下に囚われた生ける屍や幽霊族たちのメタファーとしても解釈できる。

頂天眼は自然界では生きられず、一生を水槽の中で過ごす。地下に囚われた屍たちもまた、自由を奪われた状態で生きることを強いられていた。

このように、頂天眼は龍賀時貞という人物の歪んだ内面と、彼が作り出した閉鎖的で悲劇的な状況を象徴するメタファーとして機能しているのである。

血液製剤「M」の元ネタはある?

血液製剤「M」を手に持つ水木
引用元:映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』

映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』に登場する血液製剤「M」は、幽霊族の血液を原料に作られていた不老不死の妙薬である。この「M」の由来については、いくつかの説が存在しているが、その中でも特に注目されているのが「ヒロポンの成分メタンフェタミン」「M資金」という2つの説だ。

まず、ヒロポンの成分であるメタンフェタミンの頭文字が由来であるという説について。

ヒロポンは、大日本製薬(現:住友ファーマ)から市販されていたメタンフェタミン系の向精神薬(精神刺激薬・覚醒剤)の1つで、戦時中や戦後の日本で最も普及した向精神薬である。

メタンフェタミンの頭文字が、血液製剤「M」の名前の由来になったという説は、戦時中の暗部やその影響を現在の物語に投影しているという意味で興味深い。この説を推す理由として、血液製剤「M」の「摂取すると凄まじい力を発揮し、何日も不眠不休で働く事ができる」という効果が、ヒロポンのそれに類似しているという点が挙げられる。

一方で「M資金」が由来であるという説も存在するようだ。

M資金とは、戦後の日本で存在したとされる莫大な隠し資金であり、陰謀論や都市伝説として語り継がれてきた。

このM資金の存在が「M」の名前の由来になっているとする説は、血液製剤が持つ裏社会との繋がりや、隠された陰謀を暗示しているようにも感じられる。しかし、M資金の説は少々抽象的であり、具体的な繋がりが見えにくいというのが個人的な印象だ。

以上の2つの説が考えられているが、個人的にはヒロポンのメタンフェタミン説を推したい。ヒロポンがもたらした社会的なインパクトや、それが引き起こした混乱は、血液製剤「M」が秘める恐怖や悲劇を象徴するには十分すぎるほどのリアリティを持っているからだ。作中での「M」は、ただの製剤に留まらず、過去の過ちや欲望が引き起こした悲劇の象徴として、強いメッセージを持っているのではないだろうか。

日本人形を持った咳をする女の子は屍人になった?

映画冒頭、鬼太郎たちの後を追って村に足を踏み入れた山田が、日本人形を目にするシーンがある。突然のホラー演出に驚かされた人も多いだろう。このシーンが伏線となっていたことが後々明らかになっていく。

水木が哭倉村へ向かう列車に乗っていた時、日本人形を抱え咳をする女の子と、それを心配する母親の姿が映っている。一見何の変哲もない光景に見えるが、実はこの親子は再度映画に登場していた。

血液製剤「M」を製造する地下施設のゴミ捨て場に、女の子が持っていた日本人形が落ちている。また、血を抜かれている屍人たちの中には、咳をする小さな屍人と、それを心配する大人の屍人が確認できる。これらの描写から、列車で日本人形を抱えた女の子とその母親は、屍人となってしまったと考えられるのだ。

龍賀製薬は、村の外から人々を言葉巧みに誘い込み、幽霊族の血液を精製するために屍人にしていた。もしかすると、列車に乗っていた乗客の多くが拉致され、屍人にされてしまったのかもしれない。

左目にはどんな意味があるのか?

映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』では、左目にまつわるシンボリズムが幾度となく登場する。時麿、丙江、庚子、乙米は左目を抉られて死んだ。水木が沙代の背後に狂骨や死んだ龍賀家の面々を見たのも左目である。また、水木の瞼の傷や、ゲゲ郎が前髪で隠しているのも左目だ。

これらの描写は単なる偶然ではなく、深い意味が込められているだろうことは明らかである。

私はエジプト神話におけるウアジェトの目(左目)とラーの目(右目)が関連しているのではないかと考えた。ウアジェトの目は過去を、ラーの目は未来を見るという説がある。つまり左目は過去を象徴するモチーフなのではないだろうか。

この説に基づいて考えると、時麿、丙江、庚子、乙米が左目を抉られたのは、過去の行いの報いであると考えられる。また、水木が左目で沙代の背後に狂骨や殺めた龍賀家の面々を見たのも、それらが過去の存在であるからだろう。

そのように考えると過去に深い傷を抱えている水木の左瞼に傷跡があることも納得である。

さらに、ゲゲ郎が左目を隠しているのは、彼自身が過去を忘れようとしているからだとも考えられる。「人間を憎んだ過去」を消し去り、新たな視点を持とうとする意図が込められているのだろう。

ゲゲ郎の「目で見るものだけ見ようとするから見えんのじゃ。片方隠すぐらいでちょうどいい」というセリフは、過去に囚われすぎることへの警告なのかもしれない。

沙代と時弥は誰の子供なのか?

頬を赤らめる沙代
引用元:映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』

作中、時貞が近親相姦というおぞましい行いをしていたことが明らかになる。沙代が狂骨の依代となったのも、この惨たらしい行為が一因となっている。

そこで気になるのが、沙代と時弥は誰の子供だったのかということだ。

まず沙代についてだが、乙米が口にした「龍賀の女の務め」というセリフは、乙米自身も時貞の相手をしていたことが示唆されている。このことから、沙代は時貞と乙米の子供である可能性が高い。

また時弥に関しては、時貞が彼を「作った子」と言っている。まるで自分の子供であるかのような言い様から、時貞と庚子の子供であると考えるのが妥当だろう。庚子もまた、龍賀家の「務め」を果たした1人だったのである。

この考察の信憑性を高めるため、沙代と時弥の目の色に注目したい。

沙代の目の色は「茶色」、時弥の目の色は「緑」である。時貞の目の色である「黄」を、乙米の目の「紫」を混ぜると「茶色」、庚子の目の「青」と混ぜると「緑」となる。

このように細部まで作り込まれた描写からも、彼らの血筋が非常識なものであると考えて間違いないだろう。

【ネタバレ】『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』エンドロールで描かれたラストを解説!

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引用元:『墓場鬼太郎』

映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』のエンドロールには、水木が哭倉村を去った後のシーンが描かれている。そこに登場するのは、顔が腫れ上がった女性と全身を包帯で包まれたミイラ風の大男、そして水木の逃げ惑う姿である。

このシーンは、実はアニメ『墓場鬼太郎』第1話の内容を再現している。『墓場鬼太郎』は、水木しげるの同名漫画を原作とし2008年にアニメ化された作品で、『ゲゲゲの鬼太郎』と比べるとダークなストーリー展開が特徴となっている。

エンドロールで描かれた包帯男と顔が腫れた女は、ゲゲ郎とその妻・岩子の姿であり、『墓場鬼太郎』第1話では、この2人が水木に出会い、鬼太郎と目玉おやじが誕生する物語が展開される。

アニメ『墓場鬼太郎』との違い

前述したように、『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』のエンドロールの映像は、アニメ『墓場鬼太郎』の第1話の内容となっている。しかし、これらには明確な違いがあった。

『墓場鬼太郎』において、水木は土から這い出てきた鬼太郎を恐れ、突き飛ばして左目を失明させてしまう。それに対し『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』では、鬼太郎を墓石に叩きつけようとしながらも思いとどまり、鬼太郎を抱きしめている。

水木が鬼太郎や目玉おやじとともに新たな未来を歩む姿が暗示されるこのラストは、『墓場鬼太郎』の第1話と比較することでより感動的なものになるだろう。

水木のその後はアニメ『ゲゲゲの鬼太郎(第6期)』で描かれる

『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』は、アニメ『ゲゲゲの鬼太郎』第6期の前日譚的位置づけの作品であり、第6期の第1話や最終話では、水木のその後について言及され、回想シーンも挿入される。

また、第14話では目玉おやじの過去の姿が描かれているのでぜひチェックしてみてほしい。

映画の鑑賞後に第6期を見返すことで、新たな視点から水木と鬼太郎たちの関係を楽しむことができるだろう。映画で描かれた水木の選択が、第6期においてどのように反映されているのか、その繋がりを探ることもまた一興である。

映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』ネタバレ考察&解説まとめ

本記事では、映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』について、ネタバレを含む考察と解説を書いた。

2024年10月4日には、327カットをリテイクし「R15+」指定に引き上げられた『真生版』の公開を予定している本作。

本作は迫力のあるアクションや衝撃的なストーリー展開ももちろん見応えがあるが、それ以上に細かな描写にこだわり、一つひとつの演出を注意深く見ていくことで、それぞれに意図や伏線を感じることのできる傑作である。

すでに鑑賞した人もこれから鑑賞する人も、ぜひ本記事を参考にしながら「ゲ謎」を存分に味わって見てほしい。

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山羊座3号
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「山羊座とともに」の管理人。アニメ映画を中心に、鑑賞した作品の考察や感想を書いています。生涯大切にしたい映画は『天気の子』。
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